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人間と労働の未来(中岡哲郎著 中公新書) を読んで

 今から約30年前に読んだ「人間と労働の未来(中岡哲郎著 中公新書)」
に以前の職人についてこんな記述があり、印象に残っている。
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1.大量生産の工場自動化ラインで失われた職人の世界
  その職人が荷物をまとめて立ち去ると、それとともに仕事の能力も立ち去
  ってしまうというのが、まさに職人の世界の本質であった。
  このような形で生産過程の能力が、うまい菓子を作る能力、立派なタンスを
  作る能力、良質の鉄を作る能力が、個人の帰属している労働の世界ではじ
  めて、仕事の腕をもつということが、彼がどのような状況にあっても生きて行
  ける条件を形づくるのである。
  つまり、そこには労働の能力を身につけるというよりは人間そして一人前に
  なるということと同義であった。

2.労働の中から奪われたもの
 ①自然が消えた。
  加工される材料の手ごたえ。反応する物質のにおい、音、色、振動。
  そうしたものが少しずつ労働の世界から消え、冷たく光る金属の装置がより
  多く労働の世界を占領し、対象と労働者の間を隔てるようになった。
  対象が消えるとともに労働の中から「意味」が消えていった。
  自分の行う一つの操作の「意味」を もっと直観的に伝えるものとしての
  「対象の中でおこる変化」が直接眼で見えなくなったのである。それは労働
  の中からの「対象化された労働」という実感の喪失であると同時に、労働が
  対象としての自然との関係であるとの実感の喪失でもある。労働は少なくと
  も自然について学ぶ場ではなくなった。
 ②人間と人間のつながりが消えた
  問屋の労働や職人の労働では、仕事をすることが、人間が移動するという事
  と強く結びついていた。移動しつつ結ばれる人と人の関係、人と人との交通
  が労働の不可分の要素であった。一時代前の庶民の感覚では、手に職をつ
  けることと社会人としての人と人のつきあいを身につけることとはほぼ同義で
  あった。
  そのような世界が解体したのはもちろん、古典的な工場でありふれた光景と
  して見られた何人かのチームが呼吸を合わせて一つの作業を遂行するとい
  うような協業も消えてゆきつつある。
 ③全体とのつながり
  自分の操作の意味を考える手がかりが眼に見えず、相互のつながりを考える
  必要もなく、ただ自分の目の前の装置と自分の関係だけを考えて、その持分
  をそれぞれがもっともうまくこなせば、全体はもっとも効率よく働くような
  システムの中にはめ込まれた人間にとって、全体は見えない得たいの知れな
  いものでしかない。
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今や、自動車工場から納豆の工場まで大量生産される製品の殆どが工場の自動
化ラインで流されている。
板金叩き出しの職人、旋盤の職人、フライス加工の職人は機械を操作する人とな
り自分の得意技を発揮することも吸収することも次第に難しくなってる。

私が今勤務している従業員30名程の町工場は時流に反し自ら[ローテク工場]を
標榜、単純構造製品(LED光源を内蔵した表示パネルなど)の量産と個別仕様
対応(見本市等の大規模展示小間用什器など)の一品生産を行っている。
主要な設備は 材料切断機、汎用フライス盤、穴明けプレスのみ。

量産品はパートの女性従業員が組立て、量が増えると事務所の社員が組立応援
に回る。
個別仕様の一品物は切断加工した人、設計した人が一緒になって組立てる。
おかげで過大な設備投資の負担からは免れている。

給料は大企業並みには行かないが
①加工される材料の手応え、音、色、振動はジカに感じ
②加工者と設計者が意見を交わし改善案を練り
③自分で作ったものが街で実際に使われているのを見てやりがいを感じている

世間にはこんな変わった工場もあるのが面白い。


本書の後の方で
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過去の百年間に熟練の解体の波をかぶったのが職人と熟練工とであったとす
れば、これからの百年に熟練の解体をもっとも大きくうけるのは管理的労働者、
中堅ホワイトカラー、医師、科学者、ジャーナリスト等々であることは間違い
ない。
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とも記されてあり、現在その通りの事が起こりつつあることを実感している。


H29.8.26

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