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寺田寅彦 随筆集(第四巻)[岩波文庫]を読みました

 私の通っている工場は里山にあるので敷地には晩秋になると沢山の欅や朴の落
ち葉が溜まります。
毎朝、始業前の30分 構内の掃き掃除をしていますが時々 風も無いのに落ち
葉が舞い降りるのを目にします。

 そんな時 以前読んだ 寺田寅彦 随筆集(第四巻)[岩波文庫]に記されて
いる次の文章を思い出します。
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 ある日の午後 なんの気なしに、木の梢をながめていたとき、ほとんど突然に
あたかも一度に切って散らしたように、たくさんの葉が落ち始めた。
驚いて見ていると、それから十余間を隔てた小さな銀杏も同様に落ち葉を始めた、
まるで申し合わせたように濃密な何かしら目に見えぬ怪物が木々を揺さぶりでも 
しているか、あるいはどこかでスイッチを切って電磁石から鉄製の黄葉をいっせい
に落下させたとでもいったような感じがするのであった。
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 華やかさの中に潔さの漂う紅葉に対し、新緑が風にそよぐ様子についての文章も
印象深いものがあります。

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 ・・・会場を出ると さわやかな初夏の風が上野の森の若葉を渡って今更の
ように生きていることの喜びをしみじみと人の胸に吹き込むように思われた。
昨年の若葉がことしの若葉によみがえるように、一人の人間の過去はその人の
追憶の中にはいつまでも昔のままによみがえって来るのである。
 しかし自分が死ねば自分の過去も死ぬと同時に全世界の若葉も紅葉も、もう
自分には帰って来ない。それでもまだしばらくの間は生き残った肉親の人々の
追憶の中にかすかな残像のようになって明滅するかもしれない。死んだ自分を人
の心の追憶の中によみがえらせたいという欲望がなくなれば世界中の芸術は半分
以上なくなるかもしれない。
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 この名随筆を読み返す度に何時までも季節の変化を肌で感じる感性を磨き続け
たい、と思います。
                          H22.12.1


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心に残る本の一言」カテゴリの記事

Comments

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Posted by: Beth | October 11, 2015 08:04 AM

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Posted by: wise obviously | June 16, 2016 06:41 PM

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