文学の鉄道描写
小説や随筆を読んでいると、時たま鉄道風景の描写にめぐり合うことがあります。
私はこれまで読んだなかで次の2つの文章が印象深く残っています。
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1.戸川幸夫動物文学(一)爪王(ツメオウ) [新潮文庫]
三月・・・。
山は今日も吹雪いている。
新庄駅を発した急行列車が雪に埋まった早朝の奥羽本線をよろばいながら
雄勝峠を越えて秋田県に辷り込んでいく。
喘ぎ喘ぎの苦しそうな響きが雪山の襞々に吸い込まれてしまう、山は再び
静かな眠りに陥る。
2.もめん随筆 森田たま著 [新潮文庫]
いま神戸を出てきたばかりの”つばめ”は、その響の明朗なる如くその姿も
颯爽として初陣の若武者といった感じがし、後尾の展望車が通りすぎた後は
毎日の事ながら一抹の郷愁を自分の胸へ落す。
つばめの響きは近くで聞くとどの列車にもまさって強烈な物凄い地響きであ
るそうだが、このあたりで聞くとまるで車輪が線路の上をとんでいるかと
思う程、ごく軽いタッチで からからからからと、五月の空によくまわる
矢車のように聞こえてくる。
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前者では8620形蒸気機関車の牽く木造客車の煙の匂い漂うニス色の車内から雪景
色がゆっくり去っていく様子が、
後者ではC53形蒸気機関車が直径1750mmもの大車輪のスポークが矢車のように回り
三気筒エンジンの響きが夙川の桜堤を一瞬にして走り去る姿が瞼に浮かぶ私の
大好きな表現です。
H21.10.25
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